屈原にギャルゲー(有島武郎がヒロイン)をプレゼントしよう!

時曖曖其將罷兮,結幽蘭而延佇。

世溷濁而不分兮,好蔽美而嫉妒。

朝吾將濟於白水兮,登閬風而緤馬。

忽反顧以流涕兮,哀高丘之無女。

『離騷』楚辭卷第一 屈原(著) より

高き丘のむすめれ無きをかなしむ

「どこにもオレの理想のガールフレンドがいないんだけど」と泣いている歌である。馬鹿なのか、童貞なのか。実際のところ、作者の屈原は公族で、博聞強記はくぶんきょうきで知られる。しかも大人気ソング・ライターだから、実質 酒寄彩葉さかより いろは である。馬鹿や童貞とは正反対のように見える。

「理想のガールフレンド」というのは「理想の支配者」のことだという。慈悲深き完璧な独裁者がいないことを嘆いているのである。ここから得られる教訓は「理想の独裁者というのは、都合のいいガールフレンドと同じくらいのリアリティ・ラインだ」ということである。

屈原の誕生日には 『ガールフレンド(仮)』 をプレゼントしてあげようと思う。端午たんごの節句に中国へ行けばいいのかしらと思ったが、これは命日だったか。端午の節句とは、大人気ソング・ライター屈原の追悼ファン・イベントである。

生産の大本となる自然物すなわち空気、水、土、地の如きたぐいのもの

二冊、同人誌を書いたことがある。一冊は技術書で、もう一冊はとても表に出せない恥ずかしい小説である。『白樺』も同人誌だというから、この分野は底が知れない。サークル立ち上げに関わった有島武郎ありしま たけおは農場主でもある。

有島は父親からニセコの農場を受け継いだ。といっても、有島自身が畑を耕したわけではない。世話はすべて小作人が行う。有島は思った。「ウチなんもしてないのに小作人の収入ぶんどってるのおかしくない?」「たけお思うんだけどー、地面って自然だからー、みんなのものじゃないかなって」

実際、同様の議論は今でもあちこちで起きている。土地にかぎらず、電波の周波数やインターネットのドメインなど、公共性が問われるものは意外と多い。何かとトラブルが起きる。同担どうたん拒否とか。法整備でもまだ実験的な試みが続く。客席での立ち位置強要禁止とか。

有島のアプローチはこうである。当時まだ新しい制度だった組合を小作人に組織させ、土地は組合の持ち物にする。組合を通じて、土地の共有をおこなう。小作人たちだけでは組合の運営は難しかったから、法律に詳しい顧問をつける。そして、有島はこの地から手を引く。手を引いたのである。有島は、独裁者の地位を自ら手放した。

実際には、誰にでもできることではない。有島はこのころすでに有名作家で、収入に困っていなかったのは大きい。かかせないのは、誠実で優秀な顧問だった。北海道帝国大学教授・森本厚吉もりもと こうきちと農場管理人・吉川銀之丞よしかわ ぎんのじょうである。銀之丞は私の推しで、同担を歓迎している。このあと土地が再び誰かの物になってしまうこともあり得た。「共生農園の将来を決して楽観していない。それが四分八裂して遂に再び資本家の掌中に入ることは残念だが観念している」とは、有島自身の言葉である。

開放宣言は各地に衝撃を与えた。森本のもとに 30 通あまりの脅迫状が届いたというから、関わるだけでも覚悟が必要だったはずである。しかし彼らはやり遂げた。戦後の農地開放まで組合は運営された。合議制は崩さなかった。解散も(避けられなかったとはいえ)彼らが合議で決めたのである。

こうして見ると、有島はギャルゲ―のヒロイン並みの魅力を放つ。なんせ都合が良すぎる。屈原にプレゼントしたら喜ぶだろうか。心中しようとしてくるので攻略は難しいと思う。私は銀之丞を攻略したいと思う。


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やあ…そこのきみ…すまないが、コーヒーを一杯おごってくれないか…

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